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随筆 いつも会いたい人  許玉汝作

作品の紹介です。
許玉汝先生の随筆です。

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随筆
               いつも会いたい人
                                   許 玉 汝


人生にはいろんな出会いがある。一度あっただけで2度と会うことの無い人もいれば40年、50年交流が続いている人もいる。

詩人の河津聖恵さんとの出会いから1年があっという間にすぎた。<朝鮮学校無償化除外反対>の立場を明確にし<ハッキョへの坂>と言う詩を通じてウリハッキョに通う全ての子供達と私達に熱いエールを送ってくれた詩人。私は彼女との出会いを何十年も前から待っていたのかも知れない。

 昨年6月10日、初めて鶴橋駅の掲示板の前で彼女と会う約束をした日、私達の目印は黄色とピンクであった。彼女の携帯の色は黄色、私のはピンク。子供じみた目印であったが初めて日本の詩人と会うことになった私は好奇心もあったが不安の方が大きかった。それは60年の人生の中で10分以上話し合った日本人がふたりしかいなかったからだ。幼い頃受けた祖父の影響もあって私は日本の人が苦手だった。日本の人と挨拶以外の話になると急に口が重たくなった。

 私の緊張とはうらはらに彼女は爽やかに普通にやってきた。目印を見せあうまでも無く一目で彼女だと分かった。風船のようにふわふわと喋る彼女、優しい声、暖かい眼差し、初めて会ったとは思えないほど親しみを覚えた。

4・24教育闘争を始め民族教育に深い関心を持った彼女は貪欲にいろんな事を吸収しようとした。又その民族教育が脅かされている事に警鐘を鳴らし言葉の暴力に立ち向かうため79人もの詩人と共に無償化除外反対のアンソロジ―を世に出した。そればかりか広島を皮切りに東京、京都、奈良、大阪などで朗読会をひらき活字だけではなく声を通じて人々の心に訴え続けたのだ。

アンソロジーの編集をしながら幾夜を共に明かした事か、文科省への要請、各地での朗読会、大阪のウリハッキョ訪問、日朝美術展、マダン劇の観賞、牛歩ながら<ハングルの勉強会>、熊野灘で一緒に眺めた太平洋…メールのやり取りは何千通にのぼった事か、それでも又会いたい人、いつも会いたい人…

6月の9日、彼女の10冊目の詩集<ハッキョへの坂>の出版を祝う会を文芸同大阪文学部が催した。6人の朗読、李芳世さんと石川逸子さんの書評発表、彼女の詩に対する話、2次会場で延々と続いた詩集への感想、彼女の姿勢に対する賞賛、参加者みんなが喜びに溢れていた。家路についたのは12時をまわっていた。それでも楽しかった。

次の日4軒長屋の我が家に彼女を招待した。奇しくもその日が出会い1周年記念日であることを直前に気づいた。他の友人達も何人か来てくれていつの間にか<出会い1周年記念お好み焼パーティ>になり友人達は一年間の積み重ねがお互いの信頼関係を深めてくれたねとねぎらってくれた。

 無償化除外問題が無かったとしたら私は一生<河津聖恵>と言う詩人と会うことも無かったかもしれないし、日本の人への不信感を取り除く事が出来なかったかも知れない。

 何故彼女に惹かれるのか、何故一回りも年下の彼女が頼もしいのか。彼女は純粋すぎるほど純粋な上鋼鉄のように強い。見た目はおっとりしているけれど理不尽なものに対して決して曖昧にしない。絶えず前向きに考え行動しようとする。

彼女のことを信じることの出来る人だなと思ったのは彼女が<朝鮮学校の問題は私達日本人自身の問題です。>と言った時からだ。朝鮮人のためにとは決して言わない。一時の気まぐれでウリハッキョ問題に取り組んでいるのではない。彼女は心底自分の国を愛するからこそ危惧しているのだ、日本の未来とウリハッキョへの差別問題が決して無関係なものでない事を全身で感じ取っているのだ。

ウリハッキョに通う子供達に対する眼差しはいつも暖かい。わが子を見つめるオモニの眼差しだ。
待ちに待った無償化決定発表の約束の日、またもや裏切られた日、<私はウリハッキョの子供達にどう謝ればいいのだろうか>と嘆く彼女の目からは大粒の涙がはらはらこぼれ落ちた。

アンソロジーが世に出てから一年になると言うのに無償化が実現されていないばかりか東日本大震災を口実に当然の如く無視され続けている。一番つらい東北をはじめあちこちで助成金までストップされている。

でも彼らは知らないであろう。無償化からウリハッキョを除外しようとしてもこのことをきっかけに生れた小さなひとつの出会いが又新たな出会いを生み、やがてそれは大海原になる事を。

いつも会いたい人、いつも会いたい心を大事にしたい。

               2010年6月10日
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